お高くてとっつきにくいので、昼にシターラいい
食べログ サイト ランチメニュー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ジュリアス・スージーさんのレビュー
食べログ
女王陛下に捧げるタンドリー・チキン。
東京ですばらしくおいしいインド系料理屋を挙げるならば、
ざっと40軒くらいはおもい浮かぶけれど、
でも、もしもミシュラン的見地で、内装、サーヴィス、料理のバランスを見るならば、
SITAARA 表参道本店のア・ラ・カルトの他に、どこが挙がるだろう?
SITAARA 表参道本店は、おしゃれな内装の、クロスのかかったレストランで、
ちょっぴりおしゃれして食べに行きたいレストラン。
料理もまたそんな空間にふさわしい、
エレガントで、なおかつ現地らしい、
すばらしくおいしい北インド料理をふるまっています。
たとえばSITAARA 表参道本店のタンドリー・チキンは、
チキンを秘密の調合のスパイスを混ぜ込んだヨーグルトに三時間マリネし、
金串に刺し、タンドールで焼き上げます。
むろんそれは誰もがおこなうことだけれど、
シターラのシェフはロースト技術に対する高いセンシティヴィティをそなえています。
ご存知のとおりタンドール釜は、
喩えて言えば、井戸のような構造のちいさな炉であり、
底には炭火が燃えています。
肉に火を入れるきっかけの温度は、
おそらく三百度はいっているでしょう、
肉片には、外側からは輻射熱で、
同時に内側の金串からも(底の炭火から熱が伝わり)加熱され、
肉は、その内部に肉汁をたっぷり封じ込めながら、
外と内の双方向からグラデーションのように、
まだらに焼き上がげられ、
これがなんともインド料理らしい、絶妙の焼きあがりをもたらします。
すばらしくおいしい! まさかタンドリーチキンがこんなにも夢のようにおいしかったとは!
よその店のブラジル産のキロ400円の安物ブロイラーのぱっさぱさの二度焼きタンドリーチキンとは、
天と地ほどの開きがあります、そんなもんと比べることじたいがSITAARA 青山本店に失礼です。
「タンドゥーリ・チャット」
(マンゴーパウダー、クミンなどで味つけした野菜やくだもののタンドールロースト)や、
おしゃれな「ヴェジタブル・シーク・カバブ」も、おてのもの。
いずれもチャーミングで、おいしい、オードヴルです。
チャトニ(ディップ)も、各種ていねいに作ってあります。
メインのカレーもまたすばらしく、あたりまえの家庭料理の魅力を活かしながら、
エレガントなレストランスタイルに変身させます。
アルゴビ、ビンディマサラもおいしい、
パラクパニール(ほうれんそうとカテージチーズのカレー)は、
美しい緑色のカレーで、ソースの濃度は的確、
いかにも美女を微笑ませる一品。
そして特筆すべきは「ベイガン・バルタ(焼きナスのカレー)」。
ベイガンバルタは、まず最初にタンドリー釜で、ナスを真っ黒に焼き上げ、
皮をはいで、繊維を断ち切るように細かくカットし、
肉をおもわせるような、とぅるとぅるの食感を作り出しながら、
タマネギを炒め、トマトとスパイスと一緒に炒めたもの。
ナスはほのかに炭火の香りをまとい、
それが官能的なスパイスの香りに包まれて、
その魅力は喩えようがありません。
ダル(豆のポタージュカレー)がまたエレガントで、
喩えようのない気品を備え、
そのダルを、輝くように茹であげられたバスマティライスと一緒に食べると、
寄せては返す喜悦のなかで、何度となく椅子から転げ落ちます。
これはもう女王陛下に捧げるダルです。
バイガン・カ・バルタ(焼きナスのスパイシー炒め)、
ビンディ・マサラ(オクラの香味炒め) 、
ニザミ・ハンディ(ムスリム料理、ミックス野菜のドライなカレー)
サフェド・ラジャスタン・マーンズ(モグライ料理を代表する白いカレー)、
ローガン・ジョッシュ(カシミール風のラムの煮込み)などなど、
いずれも魅力たっぷり。
1947年のインド・パキスタンの分離独立の影響で、
パンジャビのインド人が世界中に亡命した結果、
日本に限らずインド以外の国のインドレストランは、
北インドパンジャブ州の料理をふるまっている店がひじょうに多く、
世界中のインド料理のイメージを決定しました。
SITAARA 表参道本店も、おおむねそのスタイルの料理をふるまっていますが、
ただし、日本の多くの店が、
バターチキンカレー、キーマカレー、マトンカレーといった簡略版料理名で、
外国人向けの簡略版インド料理をふるまっているのに対して、
しかし、SITAARA 表参道本店は、料理名からレシピまで、
きびしくインド現地式を守り通していて、ひじょうに好感が持てます。
東京のインドレストランは飲食業界のゲットーさながらであるがゆえ、
SITAARA 表参道のような内装とサーヴィスは
「まるでフランス料理のレストランみたい」、
なんてふしぎがられているみたいだけれど、
でも、実は、SITAARA 表参道のような、
クールなスタイルのインドレストランは、
世界のどこの都市にもたいてい存在します。
デリーや、カルカッタ、ジャイプールはもちろん、
ロンドン、シドニー、メルボルン、はたまたダッカ、
あるいはトロント、ニューヨーク、ロスアンジェルス・・・。
だって、インドったって、いまや先進国、(格差は激しいとはいえ)。
インドにもインド版・辻調理師専門学校みたいなのがあって、
料理人を目指す男の子たちは、料理学校で、世界の料理を学びます。
とくに中華料理とフランス料理は必ず勉強します。
したがって、最近のインドのレストランの厨房では、
「ニンジンをジュリエンヌにカット!(ジュリエンヌとは、美女の髪の毛の細さ、すなわち千切り)」とか、
「トマトをコンカッセにカットして。(コンカッセとは、一辺1cmの立方体で、
ミックスヴェジタブルのニンジンのダイスカットの大きさ)」とか、
あるいは、「デにカット。(デとは、コンカッセの半分〜四半分のダイスカット)」、
はたまた、「じゃがいもをアリメット(マッチ棒大に)とか、
あるいはバトネに(長さ 5cm、厚さ3 ~ 4mm にカット!」というふうに、
フレンチの料理用語を使って、指示出しさえしています。
いまや世界の一流インドレストランは、そういう時代なんです。
SITAARA は、一方で、表参道本店を「いわばインド料理のグランメゾンとして」築き、
他方で、品川駅構内にSITAARA DINERのようなおもしろい発想の軽食店を作り、
さらには、デリカッテッセンを、アトレ吉祥寺、アトレ恵比寿、伊勢丹新宿店、東急東横店に開き、
上手な経営をおこない、幅広い人気を得ています。
ただし、インド料理好きを魅了するのは、なんと言っても、表参道本店の、しかもア・ラ・カルト。
東京に好きなインドレストランは40軒ほどありますが、
いまの時代を感じるクールにおいしいインド料理店という意味で、
SITAARA 表参道本店は、ぼくを魅了してやみません。
住所:東京都港区南青山5-7-17 小原流会館B1
電話番号 :03-5766-1702
営業時間:11:30〜(L/O 15:00)、 18:00〜(L/O 22:00)
定休日:日曜日
ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/
スージーさんのプロフィール
飲食店はドラマで、
かつまたお客のためのドラマの舞台だとおもっています。
いまこの文章を読んでいるあなたも、そしてぼくも、
観客であり、役者であり、レヴュアーでもあって。
ぼくはいつも旅行中のような気持ちで、アドリブで生きていて、
偶然の出会いを求めていて、
つくりものではないその店ならではの、
おのずと生まれてきた、そんな世界がある店が好きです。
数ある料理ジャンルのなかでは、インド料理をもっとも贔屓にしています。
なぜって、長いことニッポンのインドレストランときたら、
どの店もナンとタンドリーチキンとチキンカレー、マトンカレー、キーマカレーばかりで、
実はそれらは、われわれ外国人向けの簡略版インド料理でしたが、
しかし、00年代に入ってからは現地料理をふるまう、リアルインドなお店もまたぞくぞくと生まれていて、
しかも、ふるまう料理も多くの店が踏襲しているパンジャブ料理のみならず、
ベンガル料理、西インド料理、はたまた南インド各州の料理など、ヴァラエティに富んできて、
ひじょうにわくわくすると同時に目が離せません。
人間は、美女もしくはむかし美女だった人が好きで、
なおかつボケもツッコミもできる人ならば最高。
男にはなんの期待も持ってませんが、
しいて言えば、考える愉しみを知っている人か、
イケメンで、笑いのセンスがある人が好きです。
あ、そうそう、ぼくのプロフィール似顔絵は、
十年まえのもの、その頃、したしかった女の人が描いてくれたので、
記念に使わせてもらってますけど、じっさいはいまはもっと老けていて、
小柄な猿によく似ています。
十年後も生きてたら、テレビドラマ、ローハイドの歌を歌おうかしら、
老猿、老猿、老猿、ローエーーーーーーン♪ なんちゃって。
ぼく、映画ブルースブラザースが好きなの。
こんなぼくで良かったら、
どうぞ、よろしくお願いします。
●
ちょっぴり改定・新版 くいしんぼうが料理人を愛するとき。(小岩サンサール黎明期の話。)
http://tabelog.com/rvwr/000436613/diarydtl/105280/
ジュリアス・スージーの、インド旅行記
http://tabelog.com/rvwr/000436613/diarydtl/54647/
インド料理大好き男に「どこの店が好き?」と訊ねられたとき、女はどう答えたらいいの?
http://tabelog.com/rvwr/000436613/rvwdtl/3464106/?PG=0
西葛西タンドリーチキン会議。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/diarydtl/92014/
北インド料理はおいしいけれどオイリーでくどい、その嘘、ほんと?
http://tabelog.com/rvwr/000436613/diarydtl/93064/
いまさら誰にも訊けない、南インド料理ってなに?
http://tabelog.com/rvwr/000436613/diarydtl/92314/
Eat with your hand.
http://tabelog.com/rvwr/000436613/diarydtl/98247/
ネパール料理について知っていると便利なこと。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/diarydtl/92213/
西葛西は、成城化したインド。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/diarydtl/90490/
ヨーロッパのはずれの島と、象の顔の形をした大きな大陸の歴史
http://tabelog.com/rvwr/000436613/diarydtl/51896/
ウナギのグリエからはじまる、フランス料理の読み書きの話。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/diarydtl/88048/
世にもふしぎな食事会の記録
http://tabelog.com/rvwr/000436613/diarydtl/98957/
0 件のコメント:
コメントを投稿